堺市堺区の堺駅近くにある精神科、心療内科の吉田診療所です

吉田診療所

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大阪府堺市堺区栄橋町1-4-8
高杉ビル5階

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不眠症でお困りの方へ

不眠症でお困りの方へ

  • 布団に入っても眠くならない
  • 布団に入ると余計に目が冴え、いやなことや不安になることばかり浮かんでくる
  • いったん眠れてもすぐに目が覚める、夜中に何度も目が覚める
  • 3時・4時といった、早い時刻に目が覚めてしまう
  • 一応寝ているように思うが、寝た気がしない、ぐっすり眠れていない

このような症状はとてもつらいものです。布団の中で「寝よう、寝よう」とあせればあせるほど不安が高まり、余計に眠れなくなる、という経験をして苦しんでいる方はたくさんおられると思います。さらに、不眠の問題は夜の苦痛・不安だけにとどまらず、日中のだるさ、疲れ、集中力や記憶力の低下などを招きます。その結果、仕事や家事、勉学や趣味などがうまくこなせなくなり、その状態が長引いてしまうと自信も気力も失っていく、といったことにもつながりかねません。また、眠れないことへの恐怖心が芽生えてしまうと、「今夜も眠れないのでは」、「明日もまた眠れないのでは」、と睡眠に関する不安な考えが次々と浮かび、朝起きてから一日中睡眠のことばかり考えて何も手につかない、といった方もおられます。
このように不眠症状は慢性化してしまうと、生活全体に悪影響を及ぼしてしまいます。さらに、高血圧や血糖値(糖尿病)といったからだの症状や病気の悪化につながることも知られています。その一方で、「睡眠薬は怖い」、「くせになってやめられないと本に書いてあった」、「寝酒の方が安全と友達に聞いた」、といった聞きかじりの情報を鵜呑みにして、医療機関への受診をためらっていたという話もしばしばお聞きします。

不眠症の治療について

当院における不眠症・不眠症状の治療方針は、

①:治療の基本(土台)は、おくすりを使う前の非薬物療法(睡眠衛生指導や生活指導、睡眠日誌によるセルフモニタリング、不眠の(認知)行動療法的アプローチなど)です。
②:①を行いつつ、必要に応じて適正なおくすりの治療(薬物療法)を組み合わせていきます。

不眠症状の程度が軽い方、不眠症状がおこってからすぐに受診された方(1,2カ月以内)、精神科薬剤(睡眠薬、抗不安薬など)をまだ服用していない方などの場合は、おくすりを使わない非薬物療法のみで不眠症状の改善が得られることが少なくありません。
不眠を長引かせて維持させる要因として、「問題のある飲酒習慣(寝酒など)」や「長すぎる昼寝」がよくみられます。こういった要因を修正しないままで睡眠薬を使っても、不眠症状の十分な改善は得られません。まずは非薬物療法(睡眠衛生指導、不眠を維持させる要因の修正などを含む)を行うことで、睡眠薬の作用が得られやすくなると考えられます。それどころか、非薬物療法がうまく機能すれば、そもそも睡眠薬の治療を要さない場合もあります。
睡眠薬などのおくすりの治療が必要な場合でも、なるべく中止・卒薬しやすいものを最初から選んでおくことで、最終的におくすりなしで眠れるようになる可能性も高まると考えています(注)。
すでに長年にわたって不眠症状に悩んでおられ睡眠薬などの服用を長期間続けておられる患者様に対しても、上記のような非薬物療法の作用は期待でき、睡眠の質の向上や睡眠薬の減量につながる可能性があります。ただし「睡眠医療の専門医を受診すれば、簡単に睡眠薬が減らせる」というようなことはありえません。現在服用しておられる睡眠薬の量が多いほど、また長期間服用しておられるほど、減薬していくには困難も、苦労も、ご本人の意思・努力も必要であることはご理解ください。なお、厚生労働省は、「睡眠薬の使用は2種類以内」という方針を示しており、当院でもその方針に従って治療を行っています。

どのような病気・症状でも同じことですが、早期発見・早期治療がとても大切です。不眠症状が慢性化・長期化してしまう前に、お早めのご相談、受診をお待ちしております。

冒頭の写真は、当院の西側約1km先にある旧堺灯台です。この一枚に、不眠という苦痛に満ちた大海原で途方に暮れている不眠症の方々に、手助けとなるような一筋の光を灯したいという思いを込めています。

注)睡眠薬に限りませんが、すでに他院で処方されているおくすりであっても、当院では採用していないものや、新規の使用を控えているものがありますのでご注意ください。当院へ転院してこられた患者様が、当院で採用していないおくすりをご使用の場合は、当院で使用しているおくすりに置き換えることになります。詳細については受診時にご相談ください。

不眠Q&A

不眠症の治療は睡眠薬を服用するしかないのでしょうか?
不眠症の解説のところでも述べましたが、不眠症の治療にはおくすりを使う前の段階での非薬物療法が大切であると考えています。睡眠薬をまだ服用していない状態で当院を受診していただければ、最初は非薬物療法から取り組んでいきます。
また、おくすりでの治療が必要な場合でも、依存性が少なく中止・卒薬しやすい睡眠薬を選択することや、漢方薬やその他の向精神薬で治療するという選択もあります。患者様のご要望と、お持ちの病状とを照らし合わせ、病状に合ったおくすりを選択していきます。
なおうつ病・躁うつ病、統合失調症などを含むさまざまなこころの病気に不眠症状が併発している場合、おくすりを何も使わずに非薬物療法だけで治療を行うことはできませんのでご注意ください。
おくすりを使わない不眠症の治療としては、不眠症の認知行動療法・短期行動療法といったものがあります。これらの治療法を習得する研修会に繰り返し参加し、実際の治療にも役立てています。
不眠の非薬物療法というのはどういうことをするのでしょうか?
いくつかの要素がありますが、「睡眠日誌の記載によるセルフモニタリング」と、「不眠を慢性化・維持させている要因の洗い出しとその修正」が含まれます。
睡眠日誌とは、何時に布団に入って、何時ごろ寝付いて、何度目が覚めて、何時に起きだし、どれくらい昼寝をしたか、など、毎日の睡眠習慣の記録を付けていくものです。診察時、睡眠日誌の記載を見せていただきながら、どこは今のままでよくて、どこは修正していかなければならないか、などについて具体的にお話させていただきます。
不眠を慢性化・維持させている要因(不眠の維持因子)については、ご本人も気付いておられないような行動が不眠を慢性化させてしまっていることがよくあります。まずそれらの要因を明らかにして、どのように修正していけるかを検討し、修正点を具体的に指導させていただきます。不眠の維持因子はたくさんあります。よくある実例としては、寝酒の習慣、不適切な睡眠薬の使用(量が多すぎる、服薬時刻が不適切など)、夜間の激しすぎる運動習慣、夜間のたばこ・カフェイン、布団に入ってから長時間スマホをいじる、眠くないのにとにかく早くから布団に入ってしまう、などがあります。
睡眠薬を飲んだ後の行動を覚えていないことがあります
日本で使用されているほとんどの睡眠薬はベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系といわれる薬剤です。それらの添付文書には「一過性前向性健忘」や「もうろう状態」といった副作用が生じる可能性があると記載されています。服用したあとの行動を覚えていなかったり(記憶障害)、起きた後にもうろうとした状態が続くといった副作用です。これらは睡眠薬単独で生じることもありますが、お酒と睡眠薬を併用したときに特に生じやすいことが知られています。お酒と睡眠薬の併用は大変危険ですので、しないでください。
「一過性前向性健忘」や「もうろう状態」に限らず、睡眠薬を使いはじめてからそれまでなかったような症状、状態が生じるようでしたら、すぐに主治医にご相談ください。
睡眠薬を飲んでいったん眠りについたあと、起きだして何か食べているようです。そのことを自分では覚えていません。何がおこっているのでしょうか?
夜中に起きだして何かを食べているが、そのことを思いだせない・覚えていない、という症状がある場合、睡眠関連摂食障害という睡眠疾患が疑われます。朝になって、食べ残しやごみを見たり、夜中に食べていたことを家族に指摘されたりして、おぼろげに思い出すこともあります。
この疾患は原因不明のこともありますが、精神科でこのような問題が生じている場合は睡眠薬が引き金となっていることが少なくありません。特に、作用時間が短くて即効性のある睡眠薬で引き起こされることが多いようです。加えて当院の経験では、睡眠薬の銘柄にかかわらず、服用している睡眠薬の量が多い方(多剤併用例)で生じやすいようです。また、男性よりも女性で多いことが知られています。睡眠薬で睡眠関連摂食障害が生じている場合は、睡眠薬の種類の変更や減量〜中止、作用機序の異なる薬剤への変更などで対応します
睡眠薬を使っていると認知症になると聞き、不安になっています
少しややこしい話になりますが、今わかっていることを解説してみます。睡眠薬を服用している群としていない方を追跡調査していくと、服用している群の方が認知症になるリスクが高いという研究があります。一方で、両群で認知症になるリスクに差はないという研究もあります。これらのことから総合的に考えると、この質問に対する結論はまだ出ていないということになりそうです。またそれらとは別に、慢性不眠がある群とない群とを比較すると、慢性不眠がある群のほうが、将来認知症になるリスクが高いという研究があります。
一方で、睡眠薬の服用により認知機能の低下が生じ、それは睡眠薬を中断しても治りにくいという報告があります。また、睡眠薬により一過性の脳機能・認知機能の低下(せん妄、意識障害など)が生じることもあります。特に高齢の方が睡眠薬を服用される場合には注意が必要と考えます。よって、睡眠薬は漫然と続けず、適正な量を適正な期間服用するということが重要です。
睡眠導入剤と睡眠薬とはどうちがうのでしょうか?
私が研修医として現場で働き始めた頃には「睡眠導入剤」という言葉はなかったように思います。一般には、服用してから作用が表れるまでの時間が短くて寝付きを改善するが、作用が持続する時間が短くて朝の寝起きに影響しないような「睡眠薬」のことを「睡眠導入剤」と称するようです。そう、今読んでいただいたとおり、睡眠導入剤=睡眠薬です。脳の中での働き(薬理作用)も同じです(GABAa受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合)。睡眠導入剤は睡眠薬よりも良い、といった認識をされている方がしばしばおられます。こういう混乱を避けるため、当院では睡眠導入剤という表現は使いません。