当院における不眠症・不眠症状の治療方針は、
①:治療の基本(土台)は、おくすりを使う前の非薬物療法(睡眠衛生指導や生活指導、睡眠日誌によるセルフモニタリング、不眠の(認知)行動療法的アプローチなど)です。
②:①を行いつつ、必要に応じて適正なおくすりの治療(薬物療法)を組み合わせていきます。
不眠症状の程度が軽い方、不眠症状がおこってからすぐに受診された方(1,2カ月以内)、精神科薬剤(睡眠薬、抗不安薬など)をまだ服用していない方などの場合は、おくすりを使わない非薬物療法のみで不眠症状の改善が得られることが少なくありません。
不眠を長引かせて維持させる要因として、「問題のある飲酒習慣(寝酒など)」や「長すぎる昼寝」がよくみられます。こういった要因を修正しないままで睡眠薬を使っても、不眠症状の十分な改善は得られません。まずは非薬物療法(睡眠衛生指導、不眠を維持させる要因の修正などを含む)を行うことで、睡眠薬の作用が得られやすくなると考えられます。それどころか、非薬物療法がうまく機能すれば、そもそも睡眠薬の治療を要さない場合もあります。
睡眠薬などのおくすりの治療が必要な場合でも、なるべく中止・卒薬しやすいものを最初から選んでおくことで、最終的におくすりなしで眠れるようになる可能性も高まると考えています(注)。
すでに長年にわたって不眠症状に悩んでおられ睡眠薬などの服用を長期間続けておられる患者様に対しても、上記のような非薬物療法の作用は期待でき、睡眠の質の向上や睡眠薬の減量につながる可能性があります。ただし「睡眠医療の専門医を受診すれば、簡単に睡眠薬が減らせる」というようなことはありえません。現在服用しておられる睡眠薬の量が多いほど、また長期間服用しておられるほど、減薬していくには困難も、苦労も、ご本人の意思・努力も必要であることはご理解ください。なお、厚生労働省は、「睡眠薬の使用は2種類以内」という方針を示しており、当院でもその方針に従って治療を行っています。
どのような病気・症状でも同じことですが、早期発見・早期治療がとても大切です。不眠症状が慢性化・長期化してしまう前に、お早めのご相談、受診をお待ちしております。
冒頭の写真は、当院の西側約1km先にある旧堺灯台です。この一枚に、不眠という苦痛に満ちた大海原で途方に暮れている不眠症の方々に、手助けとなるような一筋の光を灯したいという思いを込めています。
注)睡眠薬に限りませんが、すでに他院で処方されているおくすりであっても、当院では採用していないものや、新規の使用を控えているものがありますのでご注意ください。当院へ転院してこられた患者様が、当院で採用していないおくすりをご使用の場合は、当院で使用しているおくすりに置き換えることになります。詳細については受診時にご相談ください。